🦴 大腿骨頭壊死症とは
「大腿骨頭壊死症」とは、股関節(こかんせつ)の骨の一部である大腿骨頭(だいたいこっとう)=太ももの骨の先端部分に血液が行き渡らなくなり、骨の組織が壊れてしまう病気です。
壊死(えし)とは「細胞が死んでしまう」という意味です。
骨の内部でこの現象が起こると、骨がもろくなり、つぶれたり変形したりして、強い痛みや歩行障害を引き起こします。
🧍♀️ 股関節のしくみ
股関節は、骨盤のくぼみ(臼蓋:きゅうがい)に大腿骨の丸い頭(骨頭)がはまり込む「ボールとソケット型の関節」です。
この骨頭の内部は血管が豊富に通っており、常に血液から栄養を受け取って骨が新しく作り変えられています。
しかし、何らかの理由で血流が途絶えると、骨が栄養不良状態になり壊死が始まります。
💡 主な原因
大腿骨頭壊死症は、大きく原因のわかるもの と 原因不明のもの(特発性)に分かれます。
✅ 原因が明らかな場合
• ステロイド(副腎皮質ホルモン)の長期または大量使用
o 自己免疫疾患や腎疾患、アレルギー疾患、COVID-19での肺炎の治療などで使用される薬
• 大量の飲酒
o アルコールが脂質代謝を乱し、血流を悪くすることがあります
• 外傷
o 骨折や脱臼などで血管が損傷するケース
❔ 特発性(原因不明)の場合
明確な原因がなくても、喫煙者などにも発症することがあり、血流障害や遺伝的体質、ストレスなどが関係していると考えられています。
⚠️ 症状
初期には無症状のこともありますが、進行すると次のような症状が現れます。
• 股関節や太ももの付け根の痛み
• 歩行時の痛みや跛行(びっこを引くような歩き方)
• あぐらやしゃがみ姿勢がつらい
• 関節の可動域(動かせる範囲)の制限
• 安静時にも痛みが出ることがある
痛みは壊死部がつぶれ始めるころから強くなり、進行とともに歩行が困難になります。
🔍 診断方法
1. MRI検査
→ 壊死の早期発見に有効。骨髄の異常信号(BML)や壊死範囲を確認します。MRI検査によって、骨の内部にある「骨髄病変(BML:Bone Marrow Lesion)」や壊死範囲を確認します。X線では初期変化が見えない場合でも、MRIで早期に発見することが可能です。
2. レントゲン(X線)検査
→ 進行すると骨頭の扁平化(つぶれ)や変形が見られます。初期にはレントゲンだけではわかりづらい場合が多いことが特徴です。
3. CT検査
→ 骨の構造変化を詳細に評価。
📊 病型(タイプ)と病期(ステージ)、骨頭圧潰率
| 病期 | 状態 | 症状 |
|---|---|---|
| 初期 | 骨の内部が壊死しても形は保たれている | 痛みがないことも多い |
| 中期 | 壊死部がもろくなり、骨頭がつぶれ始める | 動作時痛、可動域制限 |
| 末期 | 骨頭が完全に変形、関節軟骨も破壊される | 強い痛み、歩行困難 |
💊 治療法
症状や進行度によって治療方法は異なります。
目標は「骨頭のつぶれを防ぎ、関節を長く保つ」ことです。
① 保存療法(初期〜中期)
• 安静・荷重制限(松葉杖などで体重を分散)
• 鎮痛薬・抗炎症薬
• リハビリ・筋力強化
• 体重コントロール
→ 壊死の範囲が小さい場合、これらで進行を遅らせることができます。
② 再生医療・低侵襲手術(中期〜一部の重症例)
近年では、壊死した骨を修復し、再生を促す治療が行われています。
Rejoint Clinic Dr.Kの治療 「Rejoint surgery」
当院では、骨の再生を促す再生医療を取り入れた最小侵襲(日帰り)手術「Rejoint surgery」を行っています。
この治療では、MRIで特定した壊死部分(骨髄病変)に対し、
以下の再生医療の3要素を局所注入します。
1. iPS細胞由来エクソソーム(再生を促すシグナル)
2. 成長因子(Growth Factors)
3. 顆粒状人工骨(β-TCP)
これにより、骨の修復と再生を促進し、痛みの軽減と機能回復を目指します。
手術は傷約1cm・時間10分程度・日帰り可能で、体への負担が少ないのが特徴です。
関節の角度を調整し、負担を軽くする方法。
③ 人工関節置換術(末期)
骨頭が大きく変形し、痛みが強い場合は、
壊死した骨を除去して、人工関節に置き換える手術を行います。
現在は高耐久の人工関節が使用されてきています。感染や脱臼、再手術のリスクがあります。
🧠 再生医療による新しいアプローチ
「Rejoint surgery(リジョイントサージャリー)」は、
従来の穴をあけるだけの手術(骨穿孔術)とは異なり、
iPSエクソソームや成長因子、人工骨を加えることで骨再生力を高める新しい治療法です。
これにより、骨壊死部の修復が促進され、人工関節を避ける・遅らせる可能性があります。
💬 患者さんへのメッセージ
大腿骨頭壊死症は、痛みが出てから進行することが多い病気です。
しかし、早期発見と適切な治療で、関節を温存できる可能性があります。
大腿骨頭壊死症は、進行すると生活の質に大きく影響します。
しかし、「骨を再生させる」という新しい選択肢によって、関節を温存しながら痛みを改善できる可能性が広がっています。
Rejoint Clinic Dr.Kでは、
専門医による丁寧な問診、診察、画像診断を通じて、最適な治療法をご提案いたします。MRI検査で骨の内部を調べることで、壊死の早期発見・早期治療が可能です。
「歩くと股関節が痛い」「立ち上がるとズキッとする」
そんな症状を感じたら、我慢せず早めに受診してください。
注意点・リスク
• 手術部位の腫れや違和感が一時的に出る場合があります
• 壊死の範囲が広い場合は、改善が限定的となることがあります
• 感染や骨折などの合併症は稀ですが、術後に十分に評価を行います