🦴 骨髄病変(BML:Bone Marrow Lesion)とは


BML(Bone Marrow Lesion)=骨髄病変とは、骨の内部(骨髄)の一部に**炎症や損傷、浮腫(むくみ)が起こっている状態をいいます。

「MRIで白く映る部分=骨の中の炎症(BML)」
「痛みの根本は、骨の“中”にあります。」

MRI(磁気共鳴画像)で白く映る部分として発見されることが多く、骨折のように完全に折れてはいませんが、骨の中に微細なダメージがあることを示します。
ガイドラインでも、BMLは変形性膝関節症(OA)の痛みの主要因であり、病気の進行と強く関係していると記されています。

🔬 学術的背景:軟骨下骨の変化が「痛み」を生む

近年の研究では、膝の痛みは単なる「軟骨のすり減り」ではなく、 軟骨の下の骨(軟骨下骨)の変化やBMLの存在が主な要因であると分かっています。

• MRIで観察されるBMLは、痛みの強さと比例する(Felson et al., Ann Rheum Dis 2001)
• BMLは関節変形の進行を予測するマーカーでもある(Roemer et al., Semin Arthritis Rheum 2009)
• BMLの消失は症状の改善と一致する(Zanetti et al., Radiology 2000)
変形性膝関節症診療ガイドライン2023では、

「骨髄病変は変形性膝関節症における疼痛および構造変化の進行に関連する。」と記されており、学術的にも確立した概念です。

上のイラストの赤い部分がBMLで関節表面の軟骨の下、体重や関節をささえる土台の部分になります。この部位に損傷があり、痛みを生じます。

🔍 骨髄病変が起こる原因


BMLは、さまざまな原因で起こります。代表的なものは次の通りです。

1. 繰り返されるストレスや荷重 (スポーツ、立ち仕事など)
2. 変形性関節症による関節のすり減り
3. 骨の血流障害(骨壊死の前段階)
4. 外傷(打撲・捻挫・骨折など)による骨内部の損傷
5. 骨粗鬆症による骨の脆弱性

これらにより骨の中で炎症や浮腫が起こり、痛みの原因となります。

🧠 BMLで起こっていること(組織レベルの変化)


MRIで白く見える部分の内部では、次のような変化が起きています:

組織変化 内容
微小骨折 骨の梁(骨梁)が細かく割れている
骨の再構築 修復しようとして血管が増える
炎症反応 炎症細胞が集まり、痛み物質を放出
浮腫 血流の増加と液体の滞留により腫れる
これらが骨膜や神経終末を刺激し、慢性的な膝の痛みを生じます。

⚡ 症状


• 動作時の鋭い痛み、重だるい痛み
• じっとしていても続く深部の痛み
• 関節に腫れや熱感を伴うこともあります
• MRIで初めて見つかることも多く、レントゲンでは写らない場合があります

🧠 BMLと変形性膝関節症(OA)、関節痛の関係


最近の研究では、関節の痛みの多くが軟骨ではなく骨の中(骨髄病変)から生じていることがわかってきました。
つまり、「軟骨がすり減って痛い」というよりも、その下の骨が炎症を起こしている場合が多いのです。
疼痛のある変形性膝関節症では8割の方にBMLが存在しているという報告があります。

BMLはOAの「前触れ」として出現することが多く、
骨の中で「壊れ→炎症→修復→硬化」のサイクルを繰り返します。

段階 骨・軟骨の変化 BMLの特徴
初期OA 軟骨のすり減りが軽度 軟骨下骨に限局した小さなBML
中期OA 軟骨の亀裂・摩耗が進む 関節荷重部に広がるBML(内側顆に多い)
末期OA 軟骨がほぼ消失、骨同士が接触 広範囲に骨硬化・嚢胞化し、BMLは減少傾向

変形性膝関節症(OA)は進行とともに軟骨がすり減りますが、BMLはその前段階や進行期の両方で見られます。
つまり、BMLは「骨がまだ修復可能なサイン」でもあります。この段階での治療介入が非常に重要です。
このため、BMLを適切に治療することが、関節の痛みを根本的に改善する重要なポイントになります。

💊 治療法


症状や重症度により、治療法は段階的に選ばれます。

🩺 保存療法(軽症~中等症)

• 安静、荷重制限(ステッキ・サポーター使用)
• 痛み止めや抗炎症薬の使用
• 低出力超音波治療や温熱療法
• ヒアルロン酸・PRP注射などの関節内治療

💉 再生医療・手術療法(中等症~重症)

保存療法で改善しない場合、骨内部の修復を促す治療を行います。

• Rejoint surgery (リジョイントサージャリー)

iPSエクソソーム・成長因子・β-TCP人工骨を注入し、

BML、骨壊死部や浮腫、傷んだ部分の再生を促進します。


• Rejoint surgery + (リジョイントサージャリープラス)

関節の土台を修復するRejoint surgery に加えて、関節内に幹細胞を注射 する治療方法です。
関節の中から、外から、トータルに治療を行う、現在考えられる理想的な治療の一つです。


治療法 内容 デメリット
ヒアルロン酸注射 関節内に潤いを与える 効果が短い
PRP治療 血小板で修復を促進 軟骨表層止まり
人工関節 関節を置き換える 手術・入院が必要・感染・入替手術・スポーツ制限など
Rejoint surgery 骨の中を再生 日帰り・低侵襲10分〜 傷1cm
Rejoint surgery + 骨の中 & 関節内を再生 日帰り・低侵襲10分〜 傷1cm

🕒 治療後の経過


• 多くの方が数週間~数か月で痛みの軽減を実感します。
• 骨が再生するまでに時間がかかるため、定期的なMRIで経過を確認します。
• 適切なリハビリと体重管理が、再発防止につながります。

📘 まとめ


ポイント 内容
BMLとは 骨の中のむくみ・炎症・微小骨折を伴う病変
発見法 MRIで白く(高信号)映る部分
意義 痛みの原因・病気の進行の指標になる
改善の鍵 当院では再生医療Rejoint surgeryなど骨修復治療を提案
重要性 MRIによってX線では見えない「早期OA」の診断に役立つ

💬 患者さんへのメッセージ


BML(骨髄病変)は、レントゲンでは見逃されやすい「骨の中の痛みの原因」です。

変形性膝関節症では8割の患者さんにBMLがあるとされ、関節内の注射のみでは治療が困難な場合が多いと考えられています。
しかし、早期に発見し、再生医療などで治療することで、痛みを改善し、人工関節手術を回避できる可能性があります。

関節の痛みが長引く場合は、MRIで骨の状態を詳しく調べてみましょう。


注意点・リスク

• 手術部位の腫れや違和感が一時的に出る場合があります
• BMLの範囲が広い場合は、改善が限定的となることがあります
• 感染や骨折などの合併症は稀ですが、術後に十分に評価を行います

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